2018年初頭、今まで高騰を繰り返していたビットコインが大暴落しました。
ビットコインは今まで何度も暴落したことがあるだけに、多くにユーザーは当初こそよくある暴落だと気にしていなかったのですが、流石に1BTCの価値が60万円代まで暴落した時には肝を冷やしたことでしょう。
2017年12月には1BTC220万円まで高騰したビットコインが、わずか1ヶ月間という短期間で約4分の1まで下落しただけに、一時はチューリップバブルに例えられたほどです。
ビットコインの暴落に釣られるようにして、イーサリアムやリップル、ビットコインキャッシュなど、あらゆる仮想通貨が大暴落を起こし、多くの仮想通貨保有者が大損する事態に見舞われました。
ただ、ここで一つ疑問点があります。
仮想通貨は一体なぜ暴落したのでしょう?
ビットコインは歴史上、何度も暴落したことがあります。
暴落すること自体は特別なことではありません。
しかし、ここまで激しい暴落というと、2014年に起きたマウントゴックス破綻以来です。
2018年初頭、ビットコインが暴落したのは様々な要因あるのですが、今回は原因のひとつとされるテザー疑惑についてわかりやすく解説します。
Tether(テザー)とは米ドルの仮想通貨版のような存在で、1USDTあたり1米ドルの価値があります。
テザーがただの仮想通貨であれば、何かしらの問題点が発生したところで無視されたでしょう。
しかし、テザーは法定通貨と連動した価値を持つペッグ通貨の役割を果たしていただけに、テザー疑惑はビットコインの価値を揺るがす大問題に発展しました。
コンテンツ [表示]
テザーとは何か?どんな仮想通貨なのか?
テザー問題を語る上で、テザーがどんな仮想通貨なのかを知る必要があります。
テザーはビットコインなどと同じ仮想通貨ではあるのですが、将来性に関して言えば期待薄です。
というのも、テザーのレートは米ドルなどの法定通貨と固定されており、仮想通貨の世界におけるペッグ通貨の役割を果たしているからです。
テザーは2015年2月25日より運用を開始された仮想通貨で、2018年2月14日時点における時価総額は2000億円以上、時価総額ランキングは20位圏内という、非常に注目度の高い仮想通貨です。
ただし、時価総額が高い一方で、そのレートは常に法定通貨のレートに固定されているため、ビットコインのような高騰が見込まれる可能性はまずないです。
例えば、テザーの単位はUSDTなのですが、1米ドルに対し、テザーのレートは常に1USDTとなります。
米ドルとテザーの交換レートが同じなため、日本円やユーロ、ポンドなどの法定通貨に対しても、その時々のレートに合わせて交換することができます。
今後、日本円が1ドルあたり1万円まで円安が進行する可能性は、絶対に無いとは言いませんが、現実的にはかなり難しいです。
ビットコインならばそれぐらいの価格高騰はあるかもしれませんが、ペッグ通貨のテザーでは望み薄です。
それだけに、テザーを保有したからといって、将来的な値上がりは期待できないでしょう。
ただし、ペッグ通貨としての役割を果たしているということもあってか、常に価格が安定しやすく、仮想通貨の取引に用いやすいということで、多くの投資家から支持を集めています。
テザーの価値の仕組みとは?
テザーを運営している会社はTether Limitedというのですが、この会社に法定通貨を入金すると、それに合わせてテザーが出回ることになります。
例えば、Tether Limitedに1万米ドル入金すると、ユーザーはTether Limitedから1万USDTが手に入ります。
Tether Limitedには現時点において、口座に1万米ドルがあるわけですから、ユーザーが1万USDTを米ドルと交換すれば、すぐに現金として1万米ドルを調達することができます。
テザーの良い点は、その価値を常に米ドルなどの法定通貨による裏付けがとれているところにあります。
価値を裏付けているものが何なのかがよくわからない仮想通貨の世界において、テザーに関して言えば、法定通貨という確固たる価値の裏付けがあるのです。
テザーは常に法定通貨と同じレートで取引できる一方で、仮想通貨でもあります。
米ドルと違い、送金をするにあたって銀行を経由する必要がありませんし、送金をするにあたって高額の手数料を取られる心配もありません。
しっかりと価値の裏付けが為されているテザーは、価格変動が激しいビットコインよりも使いやすい仮想通貨なのかもしれません。
ただし、そんなメリットの多いテザーなのですが、2018年1月にある疑惑が浮上しました。
テザーの疑惑と問題点とは?
ビットコインの大暴落を引き起こしたキッカケでもあるテザー疑惑とはそもそも一体何なのでしょう?
もしもテザー疑惑が真実であれば、ビットコインの価格が崩壊するかもしれないと言われるほど、テザー疑惑は重要な問題を孕んでいます。
テザー疑惑とは、テザーの価値を裏付けている米ドルを、テザーの発行者であるTether Limitedが保有していないのではないのか、という問題のことです。
要するに、Tether Limitedは市場に出たテザーをすべて換金できるだけのドルを保有してないのでは、という疑惑です。
もしもこの疑惑が真実であった場合、テザーの価値が一気に損なわれます。
なにしろ価値が無いものに、法定通貨と同等の価値があると嘘をついていたわけですから、大問題です。
仮に米ドルを有していないにも関わらず、米ドルと同価値のある仮想通貨を生み出しているとなると、それはいってみればお金を勝手に生み出している事と同義ですので、通貨偽造の罪に問われかねません。
そして、この問題はTether Limitedだけの問題ではありません。
もしもTether Limitedが流通しているUSDTと同額の法定通貨を保有していない場合、流通中のUSDTの価値が一瞬で暴落する可能性があります。
つまり、仮想通貨の市場が大暴落する恐れがあるということです。
テザー問題と仮想通貨との関係とは?
なぜテザーの価格が暴落すると、仮想通貨市場全体の価値が暴落するのでしょう?
2018年1月29日、Tether Limited社は新規にUSDTを発行することで、ビットコインの市場を操作しているのではないのか、という疑惑が浮かびました。
これはUSDTを新規発行したタイミングに合わせて、ビットコインの価格が上昇しているというデータから導き出された疑惑です。
現在、仮想通貨のトレーダーはビットコインやアルトコインの取引をするにあたり、テザーを使用しています。
値上がりしそうな仮想通貨を見つけたら、テザーを売って仮想通貨を購入し、値下がりしそうだったら利確をし、テザーを買い戻します。
要するに、現在の仮想通貨の市場というのは、テザーによって支えられている部分が非常に大きいのです。
しかし、このテザーの価値が実は無価値だった時、市場を支える屋台骨が折れるわけですから、そのまま大暴落するのではないのか、と言われています。
公聴会の結果
テザー疑惑が深まる中、2018年2月6日にて仮想通貨公聴会が開催されました。
公聴会にてテザーの疑惑が暴かれるのかもしれないということで、公聴会の前日にビットコインが大暴落するなど大きなハプニングが行われる中、仮想通貨に関して様々な質疑が行われました。
公聴会では仮想通貨には一定のリスクがつくものの、ブロックチェーンの技術に関しては認める内容が多く、比較的肯定的な意見が目立ちました。
現状のところ、仮想通貨に関する法律はまだまだ未整備で、どのようなものなのかがわかっていないだけに、今後は法整備や規制などが進むことでしょう。
ただ、この時の公聴会では、Tetherに召喚状こそ送ったものの、テザー疑惑に関する発言はほとんどありませんでした。
これはおそらく、市場が混乱しないように配慮しての対応なのでしょう。
公聴会はテザー疑惑に関してハッキリさせないまま終了してしまったため、現在のところテザー疑惑はあくまで疑惑の段階で、確証はない状態です。
本当にTether Limitedは時価総額に相応しいだけの法定通貨を保有しているのか、現在のところ不明です。
テザー疑惑に対する市場の反応
確かに疑惑こそありましたが、現時点のところ、テザーに対する疑惑はあくまで疑惑であり、確固たる証拠があるわけではありません。
これがただの根拠のない疑惑で、Tether Limitedが本当に法定通貨を時価総額分保有しているのであれば、特に問題視するようなことはありません。
ただ、仮想通貨の市場は感情に左右されやすく、非常に危ういです。
テザーに関する問題が疑惑でしかない段階で、既にビットコインは大きく暴落し、一時は1BTC60万円代まで落ちました。
それは他のアルトコインも同様で、イーサリアムやリップル、ビットコインキャッシュなど、主要な仮想通貨は軒並み大きく暴落しました。
では、その後も暴落し続けたのかというと、そんなことはありません。
公聴会にて特にテザー疑惑に関する質問が出なかったことを皮切りに、市場は徐々に安定し、そして上昇するようになりました。
2018年2月14日には、1BTCあたり100万円代まで回復したほどです。
もしも1BTC60万円代にビットコインを購入した人がいれば、このテザー疑惑があった数週間だけで、資産を倍増することができたでしょう。
テザー疑惑の本当に怖いところは、このように根拠もなく感情だけで価値が暴落した点かもしれません。
今後もビットコインの価格を揺るがす疑惑は何度も出てくるでしょう。
その度に価値が暴落し、そして暴騰するリスクが仮想通貨市場には内在しています。
テザーの将来性は?
テザーは今まで、法定通貨と同じレートで交換できる仮想通貨ということで、ユーザーから高い人気を集めていました。
価格変動のリスクが低く、送金スピードが速く、コストも安いテザーは、まさにビットコインに代わるだけの潜在力のある仮想通貨でした。
しかし、今回のテザー疑惑を受け、特定の会社が通貨を管理することの危険性が浮かび上がりました。
ビットコインといえば、非中央集権的な仮想通貨のため、カウンターパーティーのリスクが非常に低いです。
しかし、テザーはTether Limitedが管理する仮想通貨ということもあり、カウンターパーティーリスクがどうしても生じてしまいます。
まさに今回のテザー疑惑など、中央集権の危うさを象徴するような問題です。
公聴会こそ無事に切り抜けられましたが、今後も似たような事例はいくらでも出てくるでしょう。
テザーを使うことの危機を多くのユーザーが感じるようになれば、今後テザーの人気は衰え、時価総額も低くなってしまうかもしれません。